矢波研究所は、5人ほどの小さな蜂の研究所です。
チーフは知識に満ちた人物ですが、研究の合間に本気で蜂と会話を試みるため、音たちにとっては「お父さんのようで、時折とても変わった人」でもあります。

[矢波研究所]
最近、継続と習慣の重要性を音から教わったミエちゃん。
しかし、最近彼女はソワソワしており、気持ちが落ち着かない様子です。
音が尋ねました。
「どうしたの?ミエちゃん」
ミエちゃんはこう答えました。
「実は、カードの支払いが溜まっていたんだけど、今月パパからのお小遣いでお金が入る予定なの。でも、やっと終わるかと思うと、つい先のことばかり考えちゃって。」
「それは良かったわね。コートやカバンなど、衝動買いしてたもんね。」
その指摘は痛いけれど、不安がなくなったら「こうしよう、ああしよう」と夢が膨らむのです。
その様子を見たチーフが言いました。
「今日やるべきことはできていますか?」
少ししょんぼりしたミエちゃんが答えました。
「実はあまり出来てないんです。」
チーフは続けて言いました。
「昨日までちゃんとできていたのに、手を抜いてしまっているのですね。」
ミエちゃんは言いました。
「実はあまりできないんです。でも、なぜでしょうか?やらなければと思うのに。」
チーフの解説:
「人間の脳は安全のために過去の失敗や未来のリスクを予測するようにできています。したがって、心は初期設定にもどるのです。
自分を責める必要はありません。
しかし、習慣や継続には適切な意志力も必要です。心が過去や未来に滞在すると、意志力が削がれ、当然今日やるべきことが後回しになります。」
ミエちゃんが尋ねました。
「後悔や不安だけでなく、期待やワクワク感でもですか?」
チーフ
「良いことを考えていても、同じように意志力は減少します。むしろ、未来の理想に固執すると、今の地味な作業が退屈に感じるのです。」
ミエちゃんは驚きました。
「そうだったんだ!」
チーフ
「心が過去や未来にいる時に活動する回路があります。脳科学ではデフォルトモードネットワーク(DMN)と呼ばれています。」
音が言いました。
「それ、最近聞いたことがあります!」
チーフ
「DMNが強く働くと、
- 集中力
- コツコツした継続
- 今ここにある時間の感覚
これらが弱くなります。特に未来のことを考えすぎる時は、DMNが強く働くと言われています。」
ミエちゃんは決意しました。
「考えすぎないようにしなきゃ!」
音
「デフォルトモードネットワークって『ぼーっと』している状態のことだとテレビで聞いたんですけど?」
チーフ
「それもまたデフォルトモードネットワークの状態です。しかし、DMNはただぼーっとしている時間だけではありません。『何も考えていないようでいて、心が過去や未来に旅している状態』なのです。」
- さっきの会話、あれでよかったかな?
- 今度の休み、何かあったっけ?
- あの時こうすればよかったのかも…
こうした思考の時にDMNのスイッチが入ります。そして、気がついたら10分が経っていたり、やるべきことが後回しになってしまうことが起こります。
ミエちゃん
「DMNって、ずいぶんな悪者なのね!」
音
「でも、時にはぼーっとする時間も必要だと偉い人も言っていましたよ。」
チーフは言いました。
「もちろん、DMNは決してただの悪者ではありません。脳が持つ正常な機能であり、むしろ悪いどころか創造性の源でもあります。DMNが働いている時の心は、過去や未来に迷走しているだけではなく、
無意識に情報をつなぎ直感やひらめきが生ま新しいアイデアの下地が作られます。
これらは創造の準備運動のような働きもしています。」
- お風呂に入っている時
- 散歩をしている時
- ひたすら拭き掃除に専念した時
- ぼんやりしていた時
こうした時にふっと解決策などが浮かんでくることがあると思います。これらはDMNが働いてくれた証拠です。
音は感心しました。
「さすがチーフね!ただの昆虫マニアではなかったんですね!」
チーフも言いました。
「……音さんもさすがです。いつもぼーっとしているのはアイデアを生むためだったんですね。」
音
「……。」
【結論】
DMNは今を奪う回路でもありますが、ひらめきを生む回路でもあります。
人間生活というものは。
覚醒している時か、ぼんやりしているとき(悪く言えば昼行灯)の二択というより、
行ったり来たりする振動運動なんです!(どちらも必要)
ここで大切なのはDMNに気づいた時、現実に帰ることです。
その方法は自分で見つけることもできますが、参考までに、
音さんが素数を記憶するときに使うフレーズ法をお伝えします。
《あくまでも例文》
- そっとビート刻む誰も気づかない(赤)
- とてもかすかにそれは始まる(橙)
- 幾億年の時を超え(黄)
- その続きへ光に乗って(緑)
- 不思議な出来事に僕らはためらったね(青)
- 途方もないことが起きている(紫)
- 音波の洪水の中に(桃)
- 泳ぐ君を見つけたよ(茶)
- 淡い影だけの姿(白)
- 何かを求め手を伸ばす(黒)
お気に入りの歌の歌詞を10のフレーズに分け、それぞれに丸い色をイメージします。
それを口ずさむことで現実に戻る儀式的なスイッチにしています。
過去の痛みも未来の不安も抱えて生きていますが、それは悪いことではありません。
ただ、
気が付かないうちに今が薄くなっていませんか?
そんな時は、あなたのスイッチで帰ってきてください。




