
この仕事を終えれば楽になる──そう信じて全力で取り組んでも、なぜか未来はいつも忙しさに満ちている。
まるで見えない魔の手が、私を楽にしないように企んでいるかのようだ…
実はこの「終わらないループ」は、魔物や運命のせいではありません。
脳と組織の“仕組み”によって、誰しもが陥る現象なのです。
今回の物語では、そのループからどう抜け出し、どのように向き合うかを、ユーモアを交えつつ人生の速度を見つめ直すヒントとしてお届けします。
『洋と追われる男の会話』―楽にならない理由とは―
追われる男:
最近、ふと気づいたのですが…今抱えているタスクを終わらせれば、一時的には楽になれるだろうと期待して、無理をしてでもどんどん仕事をこなしてきました。
しかし、実際には頑張って終わらせても、すぐにまた次の仕事が生まれてくるんで、全然楽にならないんです。
これ、私だけがおかしくて?他の人は普通なんですか?
洋:
いいところに気づきましたね。
それは“あなた一人だけではなく、何かを成し遂げようとしている人なら誰もが陥る心理”なのです。
「終わったら楽になるはず」と思っていても、実際には楽にならないでしょう。
これには理由があります。
何しろ人間の脳は、「未来に空白を期待するようにできている」んですよ。
タスクを抱えていると、
「これさえ終われば、ちょっと休めるだろう」
と自然に『未来に空白ができる』と信じ込みます。
マァこれは脳にとって一種の希望であり、防衛本能でもあります。
余裕のある未来は=『安全』というわけです。
しかし現実には…未来にその空白がほとんど生まれないため、「またかよ!」「休めねぇ……」というエンドレスな状況が生まれていたのです。

追われる男:
本当にその通りです。
では、なぜ現実は僕を楽にしてくれないのですか?
洋:
理由は大きく分けて2つあります。
① 心理的な理由:
タスクを達成したときの満足感は、一瞬で消えてしまうものです。
手に入れたかったものを得たときの感覚と似ています。
そうなると、脳はすぐに次の快感や刺激を求め始めます。
もしくは心の隙間を埋めるために
自ら新しい課題を創出しているのです。
人間は、そういう風に厄介にできているのですよ。
② 組織の構造的な理由:
「パーキンソンの法則」と呼ばれるもので、空いた時間は必ず新しい仕事で埋まる仕組みになっています。
企業は仕事を迅速にこなす人ほど、「余っている時間」に新しい仕事をプレゼントします。
組織は終わらせた仕事を『霧のかなた』へリセットし、すぐに次の未完了のタスクに移行せられるわけです。
しかも、完了に費やした頑張りの速度は普通とカウントされ、今後それより遅くなることは許されなくなりますからね。
だからどうしても、
優秀な人ほど仕事が減らない
=できる人ほど損をする
という構図が生まれてしまいます。キビシーイ!
追われる男:
なるほど…。では、僕自身が未来に空白を期待していながら、無意識のうちにまた仕事を求めているということですか?そんな馬鹿な……
洋:
いい質問ですね。
それは、あなたが大ばか者や抜け作でもなく、人間の脳が「未来の空白」いつも実際より大きく見積もってしまっているからです。
その結果、
『未来は軽く、今は重くのしかかっています。』
あなたが気づいたのは、「未来が楽になるだろう」という幻想のせいで、今を急ぎすぎてしまうという人間の心理構造そのものなのです。
追われる男:
では…どうすればこの『蟻地獄(ウスバカゲロウの幼虫)』から抜け出せるのですか?
洋:
心配無用、単純な話です。
まず「未来は楽にならない」と最初から思っておくことです。
そうすることで、今の負担が不思議なくらい軽くなります。
「タスクは自然に発生するもの」と前提を変えることです。
湧き水を汲み出すように、汲んでも汲んでもまた溜まる、そう思うことです。
その結果、『空白を作るために急ぐ必要がなくなる』でしょう。
タスクを終えたら、ちょっと止まってください。
ちゃんと達成感を味わう努力をしましょう!ここだけは少しだけ時間を作るのです。
そうすれば、脳の「まだ終わっていないものを探そう!」という未完了バイアスが弱まります。
したがって、空白の時間や余裕を、その都度きちんと感じられるようになりますよ。
最後に、一つ詩をお届けします。
[時間との和解]
多くの人が、焦ってしまう。
すぐに結果を求める。
でも歩み続ければいつかは着く。
結果も待てばやってくる。
急ぐよりも時々止まる。
速さよりも軌道に乗せる。
焦らなくても遠くへ行ける。
それが本当の人生の速度。





