84日目「勝利の方程式と脳のバグ」
よろしければ、聞いてください。
20年前、ボクが「Excel」を始めようとしたものの、途中で挫折したことを覚えていますか?もしも、完全に毎日続けていたなら、今頃はかなりの知識と技術を身につけていたでしょう。しかし、当時のボクには、20年後の姿なんて想像もできませんでした。
20年という時間は、あまりにも遠く感じられました。まるで、地平線の向こうにある存在さえ分からない国のように思えたのです。
しかし、実際に20年が経過しました。
世の中のツールやトレンドが激しく変わる中でも、Excelは現在でも多くの仕事で利用されています。時代を超えて、「本物の力」が決して裏切らないという明確な証拠が目の前にあります。もちろん、機能や使われ方は変わっていますが、長年かけて得た知識や、情報を整理し、計算し、システムを構築する能力が、一晩で無価値になるわけではありません。
もし続けていたなら、その20年間で多くの成果を積み上げていたでしょう。
[では、これからどうするか]
今からExcelを極めようとは考えていませんが、現在行っている活動だけは、5年後まで続けたいと思っています。しかし、時折、こんな考えが頭をよぎります。
「5年後には、この技術は役に立たなくなるのではないか」
「今やっていることは、時代遅れになるのではないか」
そう思うと、今日の努力が急に色あせて見えてきました。
しかし、この感覚は、人間の時間認識と関連しています。
脳の傾向その①――現在バイアス
人間は、遠い未来の大きな利益よりも、目の前の小さな利益や快適さを強く感じやすい傾向があります。5年後に得られる大きな力よりも、
- 「今日は疲れている」
- 「今すぐ休みたい」
- 「続けても役に立たないかもしれない」
という目の前の感覚が、より現実的に思えてしまいます。5年後の成果はまだ触れることができませんが、今日休むことで今すぐ楽になれます。未来の自分は薄い影のように感じ、現在の疲れは手に触れるほど重いのです。
脳の傾向その②――双曲割引
双曲割引とは、未来の価値を実際以上に小さく感じる時間評価の傾向です。例えば、
- 「今日もらえる1万円」
- 「1か月後にもらえる1万2千円」
では、今日の1万円を選ぶ人がいます。しかし、
- 「1年後にもらえる1万円」
- 「1年1か月後にもらえる1万2千円」
では、1万2千円を待てると感じる人もいるのです。同じ1か月の違いなのに、判断が逆転してしまいます。継続も同じで、頭では「5年間続ければ、かなりの力になる」と理解していても、今だけを見ると「意味がないかもしれない」と感じてしまいます。未来の価値が消えたわけではなく、現在の感覚によって小さく見えてしまうのです。
バグを乗り越える「勝利の方程式」
では、「5年後には役に立たなくなるかもしれない」と不安が生じたとき、どう考えるべきなのでしょうか。
手段やツールは変わっても、継続によって鍛えられた能力は消えません。
仮に5年後に今使っているシステムやサービスが変わっていたとしても、そこで積み上げたものが無駄になるわけではありません。
- 毎日、決めたことを実行する力
- 考えを言葉にする力
- 物事の構造を見抜く力
- 失敗を観察し、次の方法へ組み替える力
- 人に伝わる表現を探す力
- そして、時には人を少し笑わせるユーモア
これらは、一つのツールだけに縛られた能力ではありません。道具が変われば、新しい道具に持っていくことができます。
船が古くなっても、航海によって身につけた海の読み方までは沈むことはありません。
20年前のExcelは、一つの事実を教えてくれた。
20年という時間は、想像している間は非常に長く感じられます。しかし、過ぎ去れば本当に訪れます。同じように、5年後も必ずやってきます。そのときに役立つかどうかを完全に予測することはできませんが、一つだけ確実なことがあります。
何も積み上げなかった5年間よりも、何かを続けた5年間のほうが、次の一歩を選べる自分になっているということです。勝利の方程式とは、未来を正確に当てることではなく、未来がどのように変わっても対応できる自分を、今日から作り続けることなのです。
EXCELの技術が今も重宝されているように、本質は裏切らないのです。






