【第29話 解呪のピン・クッション】
[壁の傷:ⅰⅱⅲⅳⅴⅵⅶ ⅷ ⅸⅹⅺⅻⅰⅱⅲⅳⅴⅵ ⅶ ⅷ ⅸⅹⅺⅻ ⅰ ⅱ ⅲ ⅳⅵⅴⅵ ⅶ ⅷ ⅸ]
これは生前、チセイが残した独り言。 「魔力が余ってしまったので、最後にこんなものを作ってしまった。しかし、これは自分でも驚くほどナンセンスだと思う。使う者がいるとは思えない」 コチョコチョ。これで完了。
[シズコの屋敷] 「彼女(マリン)は未だに何の変化もないようだな」 「そのようですね」花瓶の花が静かに散った。 「ところで、最近偶然に発見されたものがあるのだが…」 そう言って、Hiroshiは『それ』を見せた。 二人には見慣れたものであったが、何かが大きく異なっていた。 「わかるか?」 まるで人間の世界のものとは思えないそれは、1枚の古い羊皮紙(パピルス)。二人がそれを見つめた瞬間、部屋の空気が張り詰め、テーブルの上のカップが『ピキン』と鋭い音を立てて微かに震えた。 「私には分かりません、ただ…」 「いえ、何でも。不可思議なものと思います」 Hiroshiは立ち上がり、背を向けた。「そうか…」 「これで、残るはあと2枚だ」 シズコは黙って、Hiroshiの背中を見つめていた。
[ふしぎのぼろアパート]
「それで、拾い食いしたらこうなったんだ」 ましろが呆れたように足元を見る。 『チュウチュウ』 「怪獣だ! たちゅけて!」ミュラが叫ぶ。 「魔神ちゃまの怒りだわよ!」マミが泣き叫ぶ。
「ただのちゅう太郎(ネズミ)だよ」 ましろはため息をついた。しかし、どうしたものかな……。この中に答えの鍵が残されているかもしれない。 例の黒い袋に入っていたものをテーブルに並べる。 「あの女の所持品……」ましろはあの夜の恐怖を思い出し、身震いする。 ・灰の入ったビニール袋 ・中田屋の空箱 ・グッドガイ人形 ・書きかけのノート 「うウム…難しいな、よくわからない」 よしよし、一つ一つ試してみるか。ましろはサディスティックに目を細めた。 「仕方がないな、僕がわざわざ骨を折ってやるんだからね!」 足元の2人の顔色が変わった。
【袋に入った灰】 「これは当たりだよ。そら、花咲か爺さんの話にもあるじゃないか。二人とも跪きなさい」 『おねがいしまちゅ』 バッサリ。ましろは2人の上で袋をひっくり返した。 「ギャッ! 目がシムルぅ!」ミュラが悶絶する。 「バカッ!」マミが怒る。 「花は咲かないな……」これじゃない。
【中田屋の箱】 「普通に考えて、一番怪しいのはこれだ」 2個だけ入ってた、賞味期限も切れてないきんつば。 「15個入り。原材料、砂糖、小豆、小麦粉、塩、寒天……いたってシンプルな材料。とりあえず本物を取り寄せて調べよう。『癒しのマミねいちゃん』の売上から注文するぞ」 「え〜!」マミが抗議の声を上げる。
【グッドガイ人形】 「見るからに怪しいのだが? むしろ、こういう『いかにも』物はフェイクである可能性が高いのだ」と、ましろはスルー。
【書きかけのノート】 「最後はこのノートだな」 ましろは書きかけのノートを手に取り、ページをめくった。 これはもしかして……『詩』なのか? 『大切なものがむやみに遠く、early time、光の砂時計。 知りたいの、でもちょっとずっと一人 気付いてるかしら?そろそろいいかもね。 白いアタシは it a killer あなたは the miracle』 「意味はよく分からない。でも妙に残る。」 「おいミュラ、お前歌ってみろ」 「そんなのやだよーう、リズムもないのに?」 「いいんだよ! 歌なんてものはそんなものだ。それが復活の鍵かもしれないんだぜ」 「わかったよう……」 そして、ミュラは『卑しげなソプラノ』で歌った。 なぜか、マミは少しだけ悲しそうに目を伏せてしまった。 「ふーん、うまいじゃないか! でも何も起きない…」 もう手がかりなしか?
『ワンッ!』 「ガス、どうした?」 見ると、ガスがグッドガイ人形のお尻のあたりを押さえている。 人形がどうかしたのか? ましろが人形のお尻をよく見ると、なんと小さな針が刺さっていた。 「えっ! 針が刺さるなんて?」 ん~~。ましろはその時、テーブルの隅に置いた『中田屋の箱』の端に気がついた。 あれ、ここの隅に『楊枝入れ』と書かれた小さな箱があるぞ。きんつばにこんなものいるか? それを開けると、キラリ✦
楊枝ではなく『鉄製の針』が2本入っていた。
ましろは手を叩いた。「そうか!」 「おい! お前たち、お尻を出して並べ」
「ヤバい、アンタそんな趣味あったのね」とマミ。
「物理的に無理があるぞ」とミュラ。 「勘違いするな、おめえ達がもとに戻れるかどうかの決断なんだぜ」 マミとミュラは顔を見合わせてから、しぶしぶお尻を出して膝まずいた。 「よしいい子だ」 ましろは容赦なく、鉄の針をそれぞれのお尻に突き刺した。 チクリ! 『痛いッ!』『痛いッ!』
ポンッ!ポンッ!
弾けるような音と共に、2人はスルスルと元のサイズに戻った。
「わーお! 戻ったぞ、嬉しいっ!」 喜びが爆発した、
「戻った!」
ミュラが飛び跳ねる。
マミが涙ぐむ。
ガスは尻尾を振り回す。
ましろは小さく笑った。
『チュウ』ちゅう太郎の声
……
シーン。
……
まさにその瞬間だった。 床に転がっていたグッドガイ人形の目が、ぎょろりと動いた。そしてその口から、低く歪んだ機械音声が唐突に吹き出した。
『おめでとう。おめでとう……』
喜びもつかの間、そのあまりにも不気味な仕掛けに、一同は息を呑み、完全に凍りついてしまった。
【29話終わり】 ●現在のレベル:加重 80kg 到達(max)/持続時間 15分到達(max) 完了まで後3カ月間、修行の継続と知られないことを維持する。
【第30話】をお楽しみに!
