​第23話:絶唱のBeyond(ビヨンド) ―焦土に咲く異形―

[壁の傷:ⅰⅱⅲⅳⅴⅵⅶ ⅷ ⅸⅹⅺⅻⅰⅱⅲⅳⅴⅵ ⅶ ⅷ ⅸⅹⅺⅻ ⅰ ⅱ ⅲ ⅳ]

1. 決別と、52の報酬 M1(マミ)は白衣を着たまま、部屋を出ようとした。 「待って」 マリンの声。その瞬間、マミはわずかに反応し、一瞬だけ寂しげな表情を浮かべたように見えた。だが、彼女は振り返ることなく去っていった。 いつの間にか、異形の女(ミュラ)も姿を消している。周囲には誰もいなくなった。

 

ミュラ『なあ、お前が自己催眠をかけている間のことは覚えていないのか?』

[ドンの屋敷]

M1とミュラが乗ったリムジンが停まる。そこは都会の喧騒から一歩離れ、まるで別世界に変わったかのような静寂の場所だった。 屋敷に戻ったマミは、真っ直ぐにシズコの部屋へ向かった。 「ご注文の品物です」 マミは『それ』をテーブルの上に置いた。 

 

「フフフ、ご苦労様」 冷たい刃物のような微笑みを浮かべたシズコは、火のついたマッチを無造作に投げ上げた。 

「あっ!」(なぜ?) マミが声を上げる間もなく、『それ』は一瞬で燃え尽きてしまった。

「……あら、よく燃えるわね。まるで普通の紙きれみたい」

 「M1、よく頑張りました。今日はその苦労を労い、特撰和菓子52個をご用意しました。どうぞ残さずお召し上がりください」

2. 引換と、到達 

ドンの間では、ヒロシが険しい表情で自らの記録を修正していた。だが、それを知る者はいない。

そのころ、石室。何もない壁には『神様絵』が厳かにかけられていた。 (マミ……) 「楽しかったよ」 ギザ歯、スプリットタン、縦の瞳、真っ赤な肌。 マリンは、手に入れた『超人』の証を静かに確認する。

 

マリンは、マミが持ち去った「偽物」があった場所を見つめ、掠れた声で呟いた。

「……ごめんね、マミ。あんたの嘘、アタシが台無しにしちゃった」

​彼女は、焼けるような指先で石壁の裏側に手を伸ばした。そこから現れたのは、青い光を帯び、冷徹なまでの存在感を放つ『本物』。

「でもね、これだけは……地獄に堕ちても離せないのよ」

『アタシが絶対に貫けると信じていることは、すでに決定されている』

そう言って、80キロの鉄球は持ち上げられた。

紛れもない『 パピルス』が青く光り始める。

​(うおーーん)

激しく波が立ち始め、落雷が轟く。

『えっ、ナニコレ⁉』

地上では、書き込みをする人々が予期せぬ画面エラーに驚愕していた。ブブッという通信障害。500万人の悪夢と疼きを引き換えにして、その現象は世界を覆った。

​『時間だよ! 時間だよ!』

通信障害のノイズに混じって、かつてマリンが愛用していた安っぽい目覚まし時計の音声が、不気味な大音量で世界中の端末から鳴り響く。

​地上で、チセイはそれを肌で感じていた。

「ついに来たか……」

……来た !
アタシは美しい。

――そうでなければ、ここにいない。 

 

何かが、書き換わった。 パピルスの秩序が、彼女に『Beyond』の称号を与えた瞬間だった。

●現在のレベル:加重 80kg 到達(max)/ 持続時間 15分到達(max)

完了まで後9カ月間、修行の継続と知られないことを維持する。

 

《新章へ続きます》