第七・五話
一人の男が戦場にあった。
彼の敵は数ではなく、波状攻撃であった。
その戦いが特異であったのは、敵の多くが異形の者どもであった点である。
街は焼き払われ、人々は虫けらのごとく虐殺された。
男の家族もまた、彼の目の前で命を落とした。
しかし、人間側も劣勢に甘んじたわけではない。
戦いが五年目を迎える頃、転機が訪れた。
鳥の如き男が現れたのである。そのスピード、パワー、跳躍力は、到底人間業とは思えぬものであり、彼は戦局を一変させた。
「人間の中にも、斯様な傑物がおったとは……」
あまりにも多くの敵の首を刎ねたため、彼らは一時的に撤退した。
男は英雄と讃えられた。
「いや、まだだ……まだ終結してはいない」
村の友人ヒューは言う。「奴らは退いた。今宵ばかりは祝おうではないか!」
男は応える。
「ああ、感謝する。だが、どうにも胸騒ぎがしてならぬのだ。今夜は失礼させてくれ」
「英雄たるお前が不在では仕方あるまい。(誰か心当たりのある者がいるのか?)」
男はかつて過ごした、薄暗い石造りの部屋へと戻った。
何かに呼ばれたような気がしたのである。
久方ぶりに目にする『パピルス』。
パピルスは、まるで呼吸をしているかのように見えた。
男は理由もなく手を伸ばした。
何と!手が半分消えた、いや、どこかに存在している。なぜなら、確かに何かを掴んでいる感覚があるからだ。
「うおおおおおっ」
彼の持つ生命力が腕を通して何かに移り、その衝撃で男は倒れた。
「まるで雑巾のような女の顔が見えた……」
チセイは、静まり返った石室で、ぽつりと呟いた。
彼が見つめるパピルスの裏面。『habibi』の名が、より深く、生々しい血の色を帯びて刻み込まれていた
「ふむ……どうやらこれで、アトム(原子)は書き換わるであろうな……」
- 現在のレベル
〈重さ 合計40キロ(2段階目)/時間 5分〉
【第七・五話 終わり】