第六話:刻印 ― 四人目の挑戦者

 

数日後、マリンの足元には前回の倍、片足十キロの鉄の塊が転がっていた。彼女はパピルスの裏に何か書いてあったことを思い出した。

床に広げた羊皮紙の裏面。そこには、格式高い三つの名が浮かび上がっていた。 『Habibi』 『tarao』 『hiroshi』

「ハビビ、タラオ、ヒロシ……国籍や時代が異なる名前が並ぶ。これは、この試練を乗り越えた先達たちの記録だ。」

絶望の大喜利

合計で二十キロ。それは、彼女の魂を地面へと引きずり込もうとする物理的な絶望そのものだ。「うげげ……これは本当に……っ!」

倒立すると視界が朱色に染まり、脳に激しい圧迫感が襲う。死んだら製鉄所で鉄球を作らされるのかと考え、お笑いのことが頭に浮かぶ。もっと「可憐な美少女の、切ない祈り」のような気持ちで挑戦したい。

血の契約

自嘲しながら、マリンはパピルスの本質に挑む。全神経を腕と固定された体幹に集中させるが、重力の冷酷さは変わらず、床を蹴るたびにパピルスが笑っているように感じる。

「……何よ、イライラするわね。」彼女は光る羊皮紙を手に取り、その端を思い切り噛みついた。

――ガリッ。

口の中に広がる鉄の味。それは血だ。一滴がパピルスに落ちた瞬間、青い火花にぞっとするような「緑」が混ざり合った。

「触れるな……愚か者め。」闇の中から、嘲笑するようなチセイの声が響いたが、すでに手遅れだった。血を啜ったパピルスは、深い緑の光を纏い、轟音を発した。

魂の証明

――ガチッ、ガチンッ!! ――ギッ、ギキィィィィ……。

工業用磁石のような衝撃音が静寂を破る。重力が強力な力に変わり、彼女の骨格を固定。体中の骨が限界を超えた負荷に悲鳴を上げるが、マリンの体幹は巨大な船の錨のように動かなかった。

チセイは、その光景を目の当たりにして感慨深くつぶやいた。「まさか、こんなことが起こるとは。信じられない確率だ。

マリンの視線が向けられた先には、パピルスの裏面に『hiroshi』の名前のすぐ下に新しい文字が刻まれていた。

『 m a r i n e 』

彼女は、この禁じられた装置に、自らの魂の印を刻むことを許された【四人目】となった。

  • 現在のレベル:重さ 20キロ/時間 5分

 

【第六話 終わり】


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