72日目【対談】名作の条件とは?

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捨次は先生に、こんなふうに話しかけました。

「最近になって『カムイ伝』を久しぶりに開いてみたんですけど、いやあ、今読んでも色あせないですね」

洋先生

「カムイ伝って、若い頃に読んだ時の印象と、今の年齢で読んだ時のキャラクターの見え方がけっこう違ってきませんか?」

捨次

「そうなんですよ。あの頃はカムイや赤目の忍術に夢中だったんですけど、今見ると、ほんとは一揆の凄まじさや社会の矛盾を描いた作品だったんだなってわかります」

洋先生

「まさに、時代を超えて残っていく作品ですね。誕生してから今年で60年ですから」

捨次

懐かしの漫画『あしたのジョー』や名盤『ELP』などを聴いていると、50年60年の時間をこえて生き残っているのに驚きます。

例えば、今年発売された漫画や音楽が50年後、なんと2076年です。

その時に色褪せてないか?と考えると不可能に感じませんか?。

洋先生

「それは新鮮な発想です!

もしかしたら作品の価値の物差しでもあるかもしれません。

カムイ伝、あしたのジョー、Queen、キング・クリムゾン、などなど当時流行でもありましたが、流行だけなら消えていった作品は多数あります。

本来なら古くさいなどと言って消えていってもおかしくはない」

捨次

これから50年60年といったら、僕はもういないだろうし、通信やAIも今とは大きく変わっていそう。

洋先生

スマホもコンピューターも想像つかないようなものかもしれません、でも逆にいえば

60年前は黒電話がやっと普及した頃です、白土三平氏も60年後なんて想像もしてなかった。

捨次

確かにそうだ、テレビゲームもパソコンもなかったもの

洋先生

「そうそう。捨次さんみたいに、また読み返してくれる人がいるからこそ、作品って時代を超えて生き続けるんだと思いますよ」

捨次

「映画とか小説の世界も、ほんと同じですよね」

洋先生

「映画だと『ゴッドファーザー』『2001年宇宙の旅』あたりが、ぱっと浮かびますね。

ほかにもまだまだありますけど、もう公開から60年近く経ってるものもあるわけで。

小説になると、ここからさらにびっくりですよ。

『レ・ミゼラブル』が164年前、『カラマーゾフの兄弟』が146年前、『ドン・キホーテ』にいたっては421年前です。

電話も自転車もまだない時代の話なのに、今でもちゃんと読まれてるんですから、ほんとすごいですよね」

捨次

「あ、そういえばもうひとつ面白いことがあって!

20年前によく聴いてた『focus3』を久しぶりに流したら、最初に聴いた時みたいな感動がふっと戻ってきたんです。

毎日聴いてたら、『まあ普通にいい曲だな』で終わってたはずなんですよね。

あの感じをもう一回味わうなら次は20年後か……って思うと、なんかあと一回チャンスがあるかも、みたいな気分になります」

洋先生

「それ、すごくわかります。感動って、作品そのものだけじゃなくて、時間の中にもちゃんと保存されてるんですよね。

捨次さんのその“20年飛び越えた感じ”の中で、当時の自分まで一緒に再生されたんだと思います。

で、次の20年後には、また違う感動が待ってるかもしれませんしね」

捨次

「50年後、60年後って聞くと、なんだか未知の世界って感じですけど、案外、今の音楽とか一部の作品はちゃんと聴かれたり読まれたりしてるのかもしれませんね。

そう考えると、意外と今とそんなに変わらないのかもって思えてきます」

【問いかけ】

「カムイ伝みたいな作品って、100年後まで残ってる気がするんですよね。逆に、今ある作品の多くは、記録としては残っていても、誰も手に取らないデータになってるかもしれない。

今年生まれたものの中で、小説、漫画、映画、音楽、ゲーム……将来残るとしたら、みなさんなら何だと思います?」


【補足:99%は消える】

こうして振り返ると、60年前のアルバムが今も聴けるのは奇跡に近いと感じます。これはまさに「生存者バイアス」そのもの。僕らには生き残った名作ばかりが目につきますが、その陰には、誰にも再評価されることなく埋もれていった作品が、砂の数ほど存在していたはずです。

カムイ伝の時代も同じ。無数の漫画や小説が生まれ、当時の人々を楽しませましたが、今こうして手元にあるのはそのわずかな断片に過ぎません。カムイ伝のように、読み返すたびに違う側面を見せてくれる作品は、まさに「怪物」級といえます。

小説の世界だってそうです。19世紀ロシア文学といえばトルストイやドストエフスキーが筆頭ですが、当時は何百もの作家が競い合っていました。今やその大半を専門家しか知らないとしても、僕はそれが「無駄」だとは思いません。

消えていった作品群こそが、当時の空気や人々の生活をリアルに反映していた証だからです。たとえ後世に残らなくても、当時の誰かを励まし、誰かの生きる楽しみになっていた。その「表現した情熱や苦悩」は、作り手にとって唯一無二の宝であり、その尊さは決して変わりません。

そして何より、そんな無数の作品たちが「土台」となってくれたからこそ、こうして後世まで届く名作が生まれたのでしょう。

#読書 #漫画 #音楽 #名作 #カムイ伝

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